ちょっぴり贅沢な山形牛一頭買の焼肉屋

 以前、身内の集まりで山形牛一頭買の焼肉屋に行ったことがある。不定期に集まっては食事会をする慣例がその身内同士であるのだが、いわゆる「たまにはみんなで食べに行かないか」というやつである。普段はだいたいお手頃価格の焼肉チェーン店に落ち着くのだが、集まりのうちの一人が「今回はちょっと贅沢な焼肉がいい」と言うので、要望を呑んだ幹事がちょっぴりグレードの高い焼肉屋をチョイスした。それが山形牛一頭買をしているという焼肉屋『くろべこ』だった。

 食事会当日。くろべこ溝の口店は武蔵溝の口駅から歩いて1分もかからない場所にあった。集合場所に全員集まり、いざ来店してみる。入ってすぐ脇目にガラス張りの小さな冷凍室。中に入っていたのはもちろん凍った牛肉。これが一頭買されているという山形牛なのだろうか。

 店内の雰囲気は可もなく不可もなく。ごくごく一般的などこにでもあるような焼肉屋そのものだ。皆が掘りごたつ座敷に腰を下ろすと、メニュー表に一斉に目を通しだす。メニューもこれといって特筆すべきものは無かったが、その場の全員の満場一致で頼むことになったのは、やはりくろべこの目玉たる山形牛5種盛り。

 熱を帯び始めた火鉢を囲い、久しぶりの集まりで歓談に花を咲かせるなか、注文のものが届く。5種類の部位がそれぞれ5枚ずつ、人数もちょうど5人だったので一人1枚ずつ各々が火鉢の中へと投入し、各々の好みの焼き加減で取り出して口に運ぶ。すると蕩けるような柔らかい肉の感触。思わずうっとりするのも束の間、矢継ぎ早に濃厚な牛脂がじゅわりと口の中に広がってゆく。美味い。どこをとっても平均的な焼肉屋だが、こればかりは別格の逸品。山形牛の5種盛りは高級品メニューの割にかなりリーズナブルな価格であり、やはり一頭買をしているこの店ならではのウリともいえるだろう。身の丈程々に極上の贅沢を体験してみたい、という人にはオススメの焼肉店かもしれない

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